一般社団法人 現代工芸美術家協会

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TOP > 展覧会情報 > 第63回 日本現代工芸展 授賞作品・授賞理由

展覧会情報第63回 日本現代工芸展

授賞作品・授賞理由

内閣総理大臣賞

漆黒鏡 山祇

青木 宏憧【漆】

覗き込む人々を神々の世界へと引き込む作品である。甲虫に上下を守られた中に、円形に膨らませた漆の鏡が配され、作品の前に立つ者の姿と精神とを映し込む。漆、金粉、螺鈿、琥珀、金箔などの素材を高度な技術を駆使して構成した完成度は高い。漆芸家として長いキャリアを持ち、様々な意欲作がある中でも、今作は代表作の一つとなるだろう。

文部科学大臣賞

巳・古希に染まる

上原 利丸【染】

染の世界の一つ、友禅の技法を通した傑作である。長きに渡る創作活動、制約多き様々な技法の中から作者は一画面に全ての人生観を表現してきた。古希という節目を次の展開への想いを込めて制作した一編であろうと想わせる作品となっている。古希を越えた次の展開が楽しみである。

東京都知事賞

舞い降りる

田嶋 秀之【染】

様々な試練を乗り越えながら目的地に舞い降る鳥を作者が自らの目標に向かう姿勢に重ねあわせながら、その心象を染色で表現である。 ここにある黒い線は、染料とは異素材の印伝の技法を応用し、点描とは異なる友禅の糊置きの線に置き換えられている。リアルな鳥のデザインとは対照的に、その背景は幾何学的なデザインとなっており絵画的にならないよう工夫されている。

NHK会長賞

春濤

井上 英基【陶磁】

春の岸に寄せる穏やかな波のイメージを表現した魅力的な作品である。特にロクロ技法には卓越した技量が感じられる。深みのある緑色と白色の釉薬は、留学時代に研究した彼独自のものと聞いている。

現代工芸理事長賞

祠・七五三

南 昌伸【金属】

祠・鳥居をテーマに創作され作品は、風が抜ける様な構造の形からは、古代の祠をイメージさせる。題名にある「七・五・三」は、陰陽道の思想「奇数の気の力」を引用し、構成要素として造型をしている。素材には、幾何学的な金属小片板を巧みにつなぎ合わせ、スポット接合の点をアクセントに生かして制作されている秀作である。

審査員特別賞

地の章~Swell of the Earth・2025~

興梠 宜伸【陶磁】

ダイナミックで美しいフォルムと白と黒の陶土とが、エネルギッシュな迫力となって見る者を強く引き付ける。内に秘めた作家の気概と若い感性を感じさせつつ、粘土がもつ可塑性や素材の質感を生かしながら、大地をテーマに「地の章」シリーズとして作陶を続けている秀作である。

現代工芸本会員賞

刻の堆積

今林 邦寛【陶磁】

遺跡や廃墟などの人工的な構造物が、重厚な色彩と綿密な構成力により、力強い造形となり立ち上がっている。陶技の習得に余念のない、若い作家の心の充実が作品全体を引き締め、タタラ板造りの技法で制作している魅力的な作品である。

現代工芸本会員賞

開花空華

鬼木 英幸【金属】

作者の居住する上越市は、桜と蓮の花で賑わう850年前の親鸞上陸の聖地である。
植物が地下茎にエネルギーを蓄え、成長して花開く様を造形表現している。大中小の三本が寄り添い・競い合い、伸びゆく力強さと、未来への想いの表現である。
銅板を鍛金技法で成形して、鏨を駆使して独自の透模様とする、存在感ある大作にまとめ上げている。

現代工芸本会員賞

BEYOND

佐藤 洋子【ジュエリー】 

一見してジュエリーの作品には見えないが、3体の上部に雲形の銀製のブローチが取り外し出来るように装着してある鍛金の作品である。
いつでも自由に飛んでいる雲をイメージして制作したと作者が言うが、見る人には3人の宇宙人をも思わせてユーモアを感じる面白い作品となった。

現代工芸本会員賞

風吹くままに

土橋 恵【籐】

揺蕩(たゆた)う、柔らかな形は作者の「無理せず、こだわらず生きる姿勢」を表現している。四つ目に編んだ造形で内側の構造体を作り、その周りに色の違う籐を巧みに編み込んだ形は大きく傾き、わずかな支えが絶妙なバランスを保つ。風に吹かれるような動きの隙間から覗く内面の表情も、自然で無理のない巧みな造形である。

現代工芸本会員賞

大樹

中市後 達夫【陶磁】

作者は、長年心の内に秘めた樹木をテーマとして数多く創作されている。存在感ある造形美を心掛ける作者は、陶土で成形した上に丹念に粒子を混入した緑色系と白色系の釉薬で樹木を描き、作品表面の粗粒感で独特の表情を醸し出している。鑑賞者に不思議な表情を抱かせる大変面白い作品です。

現代工芸本会員賞

 
明日の夢を運ぶ

中林 雅代【人形】

そこには何が書かれていたのだろうか?
白い本に腰を掛け、少女は小鳥とともに、明日にむかって新しい物語を語り始めようとしている。
繊細で詩情あふれる人形表現は、意外にもテラコッタによる焼成で、抑制された加飾と、青い衣装にまとわせた薄い和紙による色彩の調和が、この作品を品格が高く、優れて秀逸なものにしている。

現代工芸本会員賞

語らい

平井 恵子【織】

永きに渡る綴れ織を通して創作活動を展開してきた作者の想いが一画面にうまく表現されている。日常の生活環境の中で、つい忘れがちな自然の著しい植物の成長が、うまく透け込んだ作品となっている。時には緑の美に目を奪われ、あたかも空気と互いの会話が進む様な想いが観る者に心地良く伝わる作品である。

現代工芸本会員賞

天長地久

山村 倫代【七宝】

作者は、恐竜や化石が発掘される街で創作活動をしている。
古代から現代、そして未来へと悠久とした穏やかな時空の流れが途切れず長くつづく様にと、祈りのこもった作品に創り上げている。平面での制作は、随所に七宝焼独自の技法が効果的に使われた作品に創り上げてある。

現代工芸大賞

Wild horse -Shine-

銅谷 祐子【金属】

素材である鉄の持つ強靭さと豊かな表情を巧みに使いこなし、鉄板を繋ぎ合わせることによって馬の力強さを引き出し、作者のテーマとした「時空を超えて駆け上がるような生命のきらめき」を表現することに成功しています。
まさに新たな時代の息吹を予感させる大賞に相応しい作品である。

現代工芸賞

打ちつける波の浸食

木下 智栄【陶磁】

荒波を受け鋭く削り取られた岩塊の迫力が良く表現されている。
あえて光沢を抑えることで、その硬さや重量感が一層強調され、長い浸食を経てもなおその場に存在し続ける岩に対する作者の畏敬の念のようなものを感じる。
技術的な面で難しい形状にチャレンジしている制作にも高い評価が出来る。

現代工芸賞

ゆうゆう回遊

小林 このみ【漆】

北アルプスを望む雄大な安曇野の地に、安寧と休息を求めて辿り着いた人々や、そこに暮らす人々との出会いが、生きることを考える機会となった、作者の悠久の自然への思いを描いた作品であり、大海原を悠々と泳ぐ鯨たちの姿を時の流れと重ねて螺鈿で表現し、点在する雲や山の景色を銀の研ぎ出し蒔絵で表現した秀作である。

現代工芸賞

Bubble

近藤 佐起江【押し花】

川をイメージして、水面に浮かぶ水泡の美しさや流れを、押し花の手法を用いて表現している。素材は根菜にこだわり、芋茎やレンコン等を主に用い、和紙、藍染布との融合が絶妙に響き合っている秀作に仕上っている。

現代工芸賞

凝聚

朱 軼姝【染】

モチーフは美しく豊かな色彩と繊細な佇まいに、惹かれた梅雨に咲く青いあじさい。生地を何枚も染め、折り畳んだパーツをつなぎ合わせる独特の手法で、花びらが幾重にも重なったあじさいを表現している。白・黒・グレーに染め分けたパーツもアクセントとなり、隙間に生じる陰影が、青に変化と奥行きを感じさせ、リズム感溢れる意欲作である。

現代工芸賞

溶鉄獅子

東山 葉月【金属】

細い鉄のワイヤーを多数用いて寄せ合い、溶接をすることで獅子の毛並みを表現している。たてがみの部分はランダムに溶接することで動きをだしている。表面の処理も、あえてそのままにすることで錆をそのまま残し、鉄の素材の重厚感が出ている。荒削りの所が魅力的で、若さを感じる力強い作品である。

現代工芸賞

平和の翼

彭 坤炎【漆】

堆漆創作技法で造形されたこの作品は、世界平和と人々の安寧を願って翼を広げた鳩が宙へ羽ばたく様を表現したものである。作者はこの技法で複雑な造形を試み制作を重ねてきた。動きのある形をよりシンプルに軽やかにまとめ、金箔や色箔が効果的にデザインされて漆の魅力を更に引き立たせた秀作である。

現代工芸賞

タッセル(邪気を払う房)

松本 梨江【アクリルアート】

本作品は、良い気が風になびいて心の中に入り、邪気を払うと言われるタッセル(房)をモチーフとして、自分の心の中とタッセルの形の両方が表現されている。 自身で造り出した道具を使用し、白黒のアクリルを彫るなどして細密に描きだしている。独自の技法を駆使して、完成度の高い魅力的な作品となっている。

現代工芸賞

好奇心

三浦 友紀子【織】

静かな森の中で賑やかに巡り回るサル。何かが気になりふと動きを止めるサルの好奇心を、青森に伝わる伝統工芸「津軽こぎん刺し」で表現している。背景を単色で抽象化し、主体に3色の色を用いる事で、静の中に躍動感が生まれている。よく見ると見えて来る津軽こぎん刺しの伝統模様を使用する事で、代々継がれてきた先人達へのリスペクトが感じられ、作者の思いが伝わる秀作である。

現代工芸賞

流転

山田 晃一郎【陶磁】

作者のテーマは地球の大地や大気、そこに生まれては消える生命。それらを一体の氣の巡りと捉え、巡り廻っていく様を表現した作品である。 透かしの技法を用い、内から外に向かうエネルギーを感じさせ、黒光りする釉薬がより重厚感を増すのに成功している。これから先、色々な造形を考える事により、まだまだ伸びて行くと思わせる楽しみな作品である。

現代工芸賞

夢の中

横井 都【漆】

記憶の断片を紡ぎ、金箔彩の独創的な描写により作者の世界感の中へ引き込まれる。絶妙なバランスで成り立ち、黒呂色漆により丁寧に仕上げ、艶上げされた多角体の造形と、箔を用いた表現力がその存在感を放つ作品となっている。

現代工芸新人賞

希望に向って

明間 隆三【陶磁】

島の翼をイメージしたフォルムに象嵌を施した作品です。表面の図柄には8種類の彩色土を使い、白土の象嵌は鳥が群れをなして、希望に向かって飛ぶ姿を感じさせる意欲作である。

現代工芸新人賞

群体C

大村 耕太【人形】

新しい感性と確かなデッサン力に支えられた柔らかなフォルムが、作品にやさしい一体感を生んでいる。抑えられた色彩と包み込むような量感豊かな表現に、若い作者の意欲が溢れており、将来の飛躍が楽しみな作品である。

現代工芸新人賞

花笑み(Ⅲ)

押田 美枝【染】

光に向かって咲きほこるチューリップがモチーフで、型を何枚も重ねることにより、風に揺れている様子を表わしている。色箔がリズムよく配置され、光の反射を生み出し、奥行が感じられる優作であり、新人賞らしい清新感を感じる作品となっている。

現代工芸新人賞

恍惚

中島 美咲【漆】

熊をシンプルにシルエットのみにして、大胆に全身余す所なく花園の世界にしてしまうことで「しばし花園の中でうっとりと花と心が一体化したような気持ちに浸る熊」というテーマをうまく表現している。この新鮮で小気味良いアプローチは新人賞に値するものである。

現代工芸新人賞

悠久な時

松本 道子【染】

夏に花開くドクダミの花をモチーフにした染色作品です。背景にノース・ウェールズの古城を控え目に配置し、花を散りばめた手前の表現を効果的に高めている。 作品全体に漂う叙情豊かな生気は、木肌にろうけ染を試みた技術的挑戦と共に高く評価される新人賞である。

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