TOP > 現代工芸について > 沿革 > 1961年[昭和36年]〜1969年[昭和44年]の沿革
主 張現代の工芸という言葉は、自ら過去の工芸という言葉と対照される。過去の工芸とは我々の時代から既に遠のいた歴史的反省の存在価値しかないものを指す。之に反撥を感じ批判を加えると同時に、現代を呼吸し消化し生きた生命を感じつつ制作した作家の所産を現代工芸と名づく。
由来「工芸」というものは用と美の抱き合ったものだという観念が色々の解釈を投げかける。機能を主としつつも美的な処理を行うインダストリー・デザィン、合理性と経済的思想から生活過程に随伴することを本義として自ら量産を予期する生活工芸、或いはこれと同巧異曲である様相を呈しつつも製造手段を手製であるべきことを主張するクラフト等々に、外国の直訳的工芸批評家を加えて正に世は紛々たる状態である。
然し工芸の本義は作家の美的イリュウジョンを基幹として所謂工芸素材を駆使し、その造型効果に依る独特の美の表現をなすもので、その制作形式の立体的たると平面的たるとをとわず工芸美を追求することにある。「使える工芸」という文字は、長い間の工芸の道具的説明でしかなかったのである。
現代の工芸は又現代の新しい解釈を要求する。現代工芸美術家協会(略称現代工芸)はこのような工芸観をもつ作家の集団であって、今後我々の展開する制作活動は高い視野に立っての日本工芸の道標であるべく、広い意味に於ては日本の特性をもつ国際交流への選抜手でなければならない。百家鳴騒の工芸界にあって先ず我々の主張を明らかにし以て前進せんとするものである。
(原文のまま)