TOP > 展覧会情報 > 第54回日本現代工芸展 授賞作品・授賞理由
米国コロラドのグランドキャニオンを訪れ、その地にてインディアンとの出会いと大自然の大地の「誕生から未来」を想像させられた情景が原点で有り、それに魅了され創作に至ったものである。大自然の過酷な環境の中での生き様などを大胆にかつ繊細に造形されていて、大樋飴釉との調和がみごとであり、さらに完成度を高めていて、大臣賞に相応しい秀作である。
作者は雨をモチーフとして連作しております。白磁の清らかな白さ、その中に上品な淡い青白磁釉。また線刻により雨を表現してあります。日本海から湧き上がる雨雲により、大地を潤すしとしと降り注ぐ雨。この慈雨により樹々は青さを増し、生物は命を継承することが出来ます。口辺のうねりで、このたおやかな生命活動をも表現しています。自然の刻を気品ある作品に昇華した秀作です。材料と技法は、磁器のロクロ成形、白磁釉、青白磁釉。
作者は永年「三角形」に魅力を感じ造形活動を行っている。この作品は、アメリカ、ヨセミテ国立公園で見た岩山と苔むした洞窟などから、その生命力の強さを感じ表現したものである。四角形と異なり三角形が作り出す形態は現代彫刻的、建築的なフォルムに到達する。板状の陶土を組み合わせ、素焼き、施釉本焼きした秀作である。
ダイナミックで張りと広がりのある形態の中に美しい色合いの秀作に仕上がっている。緑色のボカシのリズムは、緑広がる大地を鳥が飛び立つ姿に感動した作者の想いであろう。一番下の水色の輪がアクセントになり全体を引き締めている。また内側フチ下に小さな鳥が大地を覗いている。
この作品は、水平線の向こうに浮かぶ蜃気楼の建物や船が縦横に伸びた様を具象化したものである。作者にとってこの風景は、記憶に残る風景の一つ、あるいは想像の風景であり、心象の景色であるという。素材は、彫刻に適した桂材を彫刻して素地を造形し黒漆塗りと上面の部分を朱のぼかし塗りをして全体に鏡面(ロイロ)に仕上げた後、金箔で造形美を引き立たせて完成させた。繊細な表現の中にも漆工の確かな技と力強い造形力を感じさせる優れた作品である。
「天空を窺い、天空を問う。神仏は天空から見守ってくれているのだろうか。ひたすら平穏を祈り、紅華の舞を捧げる。という作者のイメージが鍛金法、彫金技法を用いてレリーフ状に表現された作品である。技法的には銀鑞付、漆焼付、錫引き、硫化色仕上げ、七宝、アクリル絵具と種々の技を使いこなし、色合いも楽しいベテランの作者の優作である。