一般社団法人 現代工芸美術家協会

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TOP > 展覧会情報 > 第60回記念 日本現代工芸展 授賞作品・授賞理由

展覧会情報 第60回記念日本現代工芸展

授賞作品・授賞理由

文部科学大臣賞

MOUNTAINS

友定 聖雄【硝子】

ガラス芸術の美は、深淵なる表現に魅力を覚える。山並みの美しさから美の創造を構築する作者の意図が作品として成り立つ課程を充分に理解した上での制作となっている。コロナ渦の不安定なる日常生活から一日も早く脱却する事を願っての独自の表現となっている。工業板ガラスのもつ素材感と作者の意図が一致した秀作である。

東京都知事賞

武田 司【漆】

一枚ずつの落ち葉、その中に佇む蝶や昆虫も、そして水の滴り落ちる様も緻蜜に構成されている。命を終えて次の命を育む場所へと生まれ変わる様に対して作者の優しい眼差しが溢れている。長年にわたり漆の道の研鑽を積んできた作者の高い技術力と物事を見つめ、表現する感性が重なり合った本作は漆芸界に新しい道を開くものである。

NHK会長賞

大地の息吹

菊池 房江【七宝】

今、コロナ渦で大変厳しい社会環境である。その様な中で、生きる人々にパワーを与えてくれるものが必要と思う。東北の大地の息吹や恵、そして力が感ぜられる作品は、七宝の技に 巧みに金属素材を用いて制作された、美しい秀作である。

現代工芸理事長賞

堀 菱子【染織】

青い色の鮮やかさが際立つ作品である。画面の中央の四枚のかたちは、有無さえあやふやだが、確かな存在がある。作者は、この青たちを大海原の例え、現実の断片とした。型染め技法の優れた技と経験で、范洋とした自分の心を具現化して表現している。爽やかな秀作である。

現代工芸本会員賞

夏雲に

赤染 恒子【人形】

夏の空に湧き立つ雲。まるでダンスでも踊る様に、風に遊ぶ雲を擬人化した作品である。目に見えぬ「風」を具現化し、作者の想いを素直に表現した、心湧き立つ様な楽しい作品です。

現代工芸本会員賞

急追

井上 雅子【陶磁】

作者は、九谷の磁器土をタタラ成形により独特の建物として造型し、意図として荒々しく焼き上げ、艶黒と消黒という顔料で獲物を狙うカラスを作者独特の視点で磁体に描き、背景には金箔を焼き付けて2種類の黒色で表現したカラスを際立たせている。狙われた鼠を背面 に逃がして描くユーモアにも溢れ、今日的な空気感を漂わせた優品である。

現代工芸本会員賞

立つ春

梅田 洋【陶磁】

低い場所からじわじわと、ゆっくりだが確かに競い上がる。そんなダイナミックで力強いフォルムである。白い色だから表現できる陰影を巧みに使い、春の色を出すのに成功した。また、ロクロ成型の上にタタラ技法を併用するのは、キズが出来やすい手法であるが、長年の 経験で習得している。技術と感性を感じる力作である。

現代工芸本会員賞

水の惑星 - 変革の世紀

大西 重広【染織】

人間文明の象徴として、高層ビル群を地球環境と調和した画面に構成し、温暖化等の様々な文明による「負」の事象が人々の知恵で解決され、明るい未来の到来を願い友禅染の技法を 駆使して明るく表現された秀作である。

現代工芸本会員賞

雷雲

髙鶴 享一【陶磁】

作者はここ数年、高度なロクロ技法を駆使している。おおらかな形状の中に、洋上の嵐をイメージした作品を制作は、レリーフ状の波で表現し夜の海を思わせ、黒の釉薬で焼成、作品上部には長石釉の白色を雲に見立て、波の部分には青色の釉薬を使い、静けさの中に内面的 な強さを感じさせる秀作である。

現代工芸本会員賞

時の行方

多々内 都子【染織】

黒と白、青と赤を巧みに使いこなし、悲しみと不安を希望へと変えてくれる予感。画面真ん中にあるのは、明日への扉だろうか。手間と時間が掛かる友禅染の糸目技法を多用し、重ね色が混じること無く染め上げられ、詩的な雰囲気を創り出している。白い扉の向こうは必ず明るいと思わせてくれる秀作である。

現代工芸本会員賞

不連続の連続

橋村 一彦【陶磁】

粘土で複雑な二重構造の形体を紐作りで造形にする力量は、非常に優れたものがある。このような形を施釉して高火度で焼成する方法も、作者の工夫とたゆまぬ修練の結集であると考えられる。先人の知の集積と生命の連続で克服してきた歴史をテーマに、不連続の連続として造型した動的で美しい秀作である。

現代工芸本会員賞

波の幻影

渡邉 真樹【陶磁】

荒涼とした極寒の三陸の海は、何者も受け入れない大自然の厳しさがあり、打ちつける大きく激しい波は、圧倒的な存在感がある。この様な情景を五感で感じ、確かな造形力で荒々しい波の躍動感を表現した力強く繊細な作品である。

60周年本会員記念賞

曇りのち春

小田中 藍【染織】

作者は、冬の厳しさの中に住み、雪が解けていく様子や、暖かい春を早く探しに行きたい願望を、染織の技法を駆使して、実にコミカルに楽しげに表現している。全体に淡い色調で良 くまとめた秀作である。

60周年本会員記念賞

遥かな道へ

金子 章【陶磁】

北海道帯広市にて長年に渡り土の造形に勤しむ作者の中での秀作である。北海道は、縄文遺跡より夥しい数の土器が出土する。本体は、陶土で焼かれて片側には波文様が表現されている。内側には磁土で焼かれた器状のものが配されている。全体をブルー系の釉薬でまとめ、土と火による創作表現の歴史から未来を貫く作品として評価が高い。

60周年本会員記念賞

時空花 '22

中村 茂子【革】

画面一杯に花咲く一輪の白い花は命の象徴であり、人々に生きる力を与えてくれる。ひとひらの花びらは柔らかなレリーフにて組み上げられ、それぞれの表情が豊かである。この花びらは命を終えると分かれて時空を浮遊し、次の命を生み出すもので、輪廻転生を描いている。近年の皮革芸術の中で、レベルの高い優作である。

60周年本会員記念賞

青の記憶

畠山 マリ子【パッチワーク】

ライトに浮ぶ水槽の中の様を、下から覗いく童心の視点で、キラキラ感、ワクワク感、心ときめいた気持ちを表現しています。新潟の十日町にある着物の産地で習得した技で染めた布地を用い、厚地の量感を出した作品で、パッチワークの中でもユニークな存在です。

60周年本会員記念賞

汽水域(生命育む場所)

藤見 眞知子【染織】

地球自然の成り立ちから、生命の誕生に想いを染織に転化した作者の意図が、画面から滲み出している。染織技法の限りある中で、染独自の美しさが色彩構成から感じ取れる秀作である。汽水域の生命育む場所に作者独自の感性と美を求めた良き結果となっている。

現代工芸大賞

Form

野田 怜眞【漆】

東南アジアで異文化と出合った時の感動をもとに、日本文化の来し方に思いを巡らせ、自然崇拝の精神と未来への前進を勝ち虫の姿にのせて表現している。乾漆技法を駆使した造形に螺鈿、蒔絵などの伝統表現を加味し昇華させ、その圧倒的な存在感は現代工芸60年の歴史の中でも異彩を放つ優作である。

現代工芸特別賞

ツクシメブク

土田 康彦【硝子】

この作者は、イタリア・ヴェネツィア在住で長い間にわたりムラーノ島に工房を構える日本人ガラス作家である。この作品は、つくしが芽吹く春の瞬間を見事に凝結させながら、あえてシンプルなガラスの技法によって、色彩、デザイン、かたち、それぞれが朴訥な表現となっている。戦争の止まらない混沌とした時代に、真に大切な地平に回帰するかのように、新しい命の吹きいずらんことを念ずる作者の願いが伝わってくるようでもある。

現代工芸賞

月の廃墟

今林 邦寛【陶磁】

直線と曲線をうまく使い月明かりに浮かび上がる構造物を、幻想的に見せることに成功した。おもにタタラ作りで製作されており、光らないマット系の釉薬が功を奏して廃墟の様な寂れた感じもおもしろい。これからを期待させる意欲作品である

現代工芸賞

伊与田 朋美【人形】

人形という静かな造形が多い中、この作品は燃える様な赤を使い、炎の精霊をイメージ、人形の素材も多種に駆使し、服装には雲竜紙を使い動きを出し題名を感じさせる見事な表現をした秀作である。

現代工芸賞

希望

内山 元子【染織】

冬に咲く“蝋梅”の花を主題に、特徴的なレリーフ状の織り方と多彩な糸使いによって、匂い立つような華やかな世界の表現に成功しています。小さな蕾が大きく花開く姿からは明るい兆しが感じられ、私達を勇気付けてくれるようにも思える優作です。

現代工芸賞

回帰

加納 義晴【木】

楠木の重厚な材を使った大作である。カンナとノミを駆使し、全力で大木に向き合おうとする作者の勢いを感じさせる。時の流れの中で繰り返される事象もいずれは元のところに回帰する――作者自身の人生と重ね合わせながら感慨が込められた作品である。

現代工芸賞

古代の聲 Ⅱ

玄 平【陶磁】

シンプルな形態ですが、その荒々しさとは対照的に作者の心象イメージが、計画的に、かつ繊細に表現されています。逃れようのない大きな力と、それらに逆らい抵抗する力。実直で素直な表現が、見るものに強烈な印象を与えています。

現代工芸賞

INORI

関口 雄希【漆】

混沌とした世の中から天空に向かう「祈り」のエネルギーを乾漆技法にて造形する。蒔絵が施された面と変り塗りの面が、複雑にからみ合い構成された稜線が鋭く立ち上がる。作者が世界の平和と安定を希求する思いが昇華された秀作である。

現代工芸賞

過程

田嶋 貴美子【竹籐】

竹のもつ素材のしなやかさを使い立体的に空間を包み込む造形としての大きさを感じる秀 作である。作者は次の様な制作意図を述べている。〈日常が「動」から「静」に変わってしまったコロナ禍の中、立ち止まり身近な人達や動植物に目を向けてみると日々変化してい る様子が感じられるようになった。その時々の気持ちを作品に表現した。〉

現代工芸賞

ダンジョン

能勢 恵子【染織】

『ダンジョン』は『地下迷宮』の意であろうか!コロナ禍による都市機能の崩壊を上部に配 して、対比させた構図で、生命の無限の増殖に溢れ、想像力をかき立てています。友禅の技法で、丁寧に染め分け、豊かな色調と、自由なラインで、希望を感じさせる作品に表現されている秀作です。

現代工芸賞

福々-fuku fuku-

平戸 亜海【金属】

銅版の鍛金技法によりふくよかなペンギンのフォルムを捉えた秀作である。皇帝ペンギン 親子の靴下やスリッパ姿が、家庭的女性的な視点で、福せを願う気持ちが見る側に伝わります。無数の金槌痕は金属でありながら、福も暖かさも伝えてくれています。

現代工芸賞

千古ノ祈

山村 倫代【七宝】

いにしえから海洋に広く分布し繁栄したアンモナイト。人々が受け継がれてきた想いや祈りの連鎖をアンモナイトというモチーフで表現している。現代のさまざまな困難にも負けることなく、その想いは未来へ続き昇華していく様を具現化した秀作である。

現代工芸新人賞

頭ん中

榊原 幸代【染織】

さまざまな色彩をおもしろく、楽しく組み合わせて、わくわくしたり、困惑したりする頭の中をうまく表現した。ロウで壁を作って友禅染を使い色を置き染めている。単純な技法をうまく使った精力的でパワーを感じる秀作である。

現代工芸新人賞

翠緑

高橋 由美【染織】

白い光と緑の光が交差しながら、色ガラスの中に入って、屈折しながら、美しいグラデーションの光となってハーモニーを醸し出している。確かな織の技法で構成した、タペストリーです。

現代工芸新人賞

風の舞い

中井 惠美子【革】

革の素材を活かしたレリーフ作品。花や植物をモチーフに奥行きのある面構成で、明るい光の中で、春風に舞う花の香り立つ清々しさを表現する。レリーフ状に彫り込まれた床革の上に、白を基調とする“なめし革”を継ぎ目なく極め込む。革の素材感で柔らかい質感も、引き締まった存在感を醸し出し、叙情的な光の陰影を表現した秀作である。

現代工芸新人賞

深度5500

南雲 龍人【陶磁】

この作品は先の大戦で深海へと沈んだ艦船を表現し、その船の乗組員の御霊が無事祖国へ帰ることが出来るよう祈りを込めた作品である。紐作り技法に様々な色の化粧装飾、その上に釉薬を重ね、冷たい深海でありながら御霊を包み込むような暖かみも感じさせる作品である。

現代工芸新人賞

記憶の一片 ‐踊ろう‐

横井 都【漆】

漆作品で呂色仕上げの面に金箔を貼り、箔削りを入れて踊るイメージを表現している。各パーツを組み立てて躍動感と柔軟性の両立に成功している。艶上げの磨きも丁寧で、全体的にまとまりのある美しい作品で秀作である。

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