TOP > 展覧会情報 > 第54回日本現代工芸展 授賞作品・授賞理由
人生を船にたとえて荒波あるいは雷雲にもまれている姿を、北斎の「神奈川沖浪裏」のイメージを意識して制作したと作者本人の解説にある。鍛金と鋳金の金工技法で造形して、金箔と鮮やかな色の絹糸で人生の節目を表現した。作者の近年の作品は、金属と異素材を組み合わせて豊かな色調を得ることに心掛け、独自の表現方法にチャレンジしている。
ワーグナーの描いた楽劇「ニーベリングの指環」をモチーフにして悲劇を超えて最後に神々の世界から真の愛が甦るという場面を高度な表現技術を駆使して作りあげた壮大な抒情詩ともいえる作品である。
この作品の表現技法は、ポインツアンドラインズである。
厚板透明ガラスをカットした部材を巧みに組み合わせることにより、ガラス素材特有の透明性と、淡い緑色の色彩を神秘的に醸しだしている。また、カットした複雑な断面からは、意図する緊張感ある存在感・爽快感を感じ取れる。
創作意図は、点と線と面での構成で透過する光線、反射する光線が複雑に織り成す光の造形をもって、作者自身の想いと社会を取巻く壮大な自然界との対話を表現しているすぐれた作品である。
和紙の様々な技術を駆使して、作者の故郷への思いを表現しているのではないだろうか。全体を黒と白だけで表現している作品があるが、波間に浮かぶ鳥や波の細かい描写の微妙なコントラストが調和して、作者の想いが感じられる作品である。
金・銀・平目粉・具・金梨子地粉の研ぎ出し技法を駆使して、この世界を取り巻く時空や、宇宙にある星々の限られた元素から成り立っている生命体も不思議な現象であると捉え、複雑にみえる様相も元々はひとつ(ワンネス)から生まれ始めているという思いを表現している。秀れた作品である。
秋、蔦が赤く変わる。寒い冬をのり越え、春を迎えるため葉を赤く染め心を奮い立たせている。
一年の最後の力ではなく未来のために と。
この作品は、つづれ織りをベースに織り独特の〝はつり〟という、緯糸を折り返すことによりできる経の線を生かし奥行きを表現している。
作者の想いが十二分に織り込まれた力作である。