TOP > 展覧会情報 > 第56回日本現代工芸展 授賞作品・授賞理由
作者は、「十代の終わり、日米戦争のさなか、呉海軍工廠、水雷部で人間魚雷の最終調整にかかわった生き残り! ここで国に命捧げる決心の17歳であった。」
当時の海の印象を一つの形としたものであると述べている。
自身が藍甕で調整した藍で染めた古式灰汁発酵建て正藍染の作品で、宗教的なテーマを奥深くまで探究し、長く深い人生の味わいを感じさせる。
鋳物による造形で、樹木の種子をモチーフにしてイメージを展開している。
羽根のある楓の種子がもつ、風を受けて遠くまで飛ぶ合理的な形を通して流れるような曲線の美しさを表現した秀作である。
星雲間を飛行する宇宙船であろうか。シャープで未来的な広がりを持ち、器面に映る銀河宇宙は壮大で作者の心象をよく表している。
乾漆技法で成形し、星の煌めきを京都オパール、鮑貝により表現し、螺鈿による加飾と相まって漆芸らしい豪華さを演出している。形と加飾に一体感があり雄大な構想力を存分に湛えたている。
日光の自然と山岳信仰をテーマに、対極にある四季の美しさと厳しさをあますことなく表現した秀作である。
陶土を大胆に切り取り、鉄釉を焼き流したうえにプラチナによる加色を用いて、大自然の見事な融合に成功している。
作者は今も各地に残る歴史的意味を多く有する土地に毎年出掛け、古代からのメッセージを強く心に享けるという。
脳裡に強く焼付いた記憶の断片を、温め昇華させ具現化させた秀作である。
作者は夏に訪れた瀬戸内・直島の地中美術館で、空間から生まれる光と影、存在する水と自然の共生に強い印象を受けたと語る。
天然灰汁発酵建ての藍染をベースに、抜染糊を少しずつ重ね、瀬戸内の寄せる波とそこに寄せる風に三角錐を浮遊させ、幻想的に空間を表出している。